epilogue② ヒマラヤン水晶の輝き
2014年。どんどん寒くなる北インド、ヒマーチャルプラディッシュ州。
初めてのインド
広大なインドに圧倒されて、当初描いていた予定は意味を持たないと理解し、起こる出来事出会いに逆らわず、惹かれた場所へ無理のないタイミングで動いていくことを探っていたような。あてのない ”旅”
旅の途中で知り合った“マクラメ”という天然石を紐で囲ってジュエリーを作っている日本人の家族が、タクシーをチャーターして水晶の買い付けと山の中の秘境の温泉へ向かうという冒険に便乗させていただけることになった。
インドでも有数の採掘量を誇る洞窟を所有している方のお宅を訪ね、そこで、何トンもの水晶の原石を代わる代わる見せていただいた。
日本ではミネラルショーなどに出向かなければ見ることもできない、大きな透明度の高いクリスタルの塊などが発掘されてほやほや世界の石商人たちが仕入れにやってくる場所だった。
水晶には土や小さな石のような塊鉄のような色の粘土も付着したりしていた。
キラキラに磨かれる前の、水晶の原石達野生のまま、ヒマラヤの大自然の一部としてそこにあるようで、何万年もヒマラヤの山の中で眠っていた、クリスタルがこの世界に掘り出されて、光を浴びて間もない赤ちゃんのような感じがした。
その時に購入した水晶は、この文章を書いている部屋で輝いています。
水晶は地球が悠久の時をかけ育んだ記憶のかけら。
こんなに美しいものを私たちに見せてくれる地球は、
なんてロマンティックで優しいのだろう。
水晶を買い付けの後は、山の中の秘境の天然温泉へ向かった。
タクシーがその谷に入るとき雪が降り始め、しんしんと降る静かな湯気に曇った路地を抜け温泉宿に向かって歩いた時の事を今も鮮明に覚えている。
当初は1週間くらいしたら南に向かおうと思っていたけれど、雪はその後も降り続き翌朝起きると谷全域の送電線が倒れ大規模な停電になっていた。
谷から下りる道は雪のためクローズし、谷に閉じ込められてしまったのがこの山との出会い。
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